ガイドブックには載っていない観光体験が楽しめる「JALオンライントリップ」をZoom Meetingsで開催

ガイドブックには載っていない観光体験が楽しめる「JALオンライントリップ」をZoom Meetingsで開催

日本航空株式会社(以下JAL)では、2018年よりZoomを全社導入し、日々の会議での利用はもちろん、コロナ禍においてはさらにその活用が広がっています。今回は、昨年開始した「JALオンライントリップ」について、プログラムを担当するJAL社員の方にお話をおうかがいしました。

ガイドブックには載っていない観光体験が楽しめる「JALオンライントリップ」をZoom Meetingsで開催
回答者:日本航空株式会社 デジタルイノベーション推進部 イノベーション推進グループ 下川朋美様

Q. 企画発案の背景と、企画内容を教えてください。
デジタルイノベーション推進部では、デジタルを活用したイノベーション領域に取り組んでおり、中でも私の所属するチームでは、お客さまに飛行機を利用して旅に出ていただくための販売促進のデジタルイノベーションがミッションとなっています。VRなどで旅を気軽に擬似体験し、旅を身近に感じていただいたり、今まで興味がなかった場所に興味を持っていただいたりするようなプロジェクトを進めてきました。昨年、コロナ禍もあり、イベント型ではなく、PCやスマホでのご自宅からの旅の擬似体験にチャレンジしようと方向転換し、「JALオンライントリップ」の企画が生まれました。

私たちは、「Try on trips ~旅を試着する~」というコンセプトをもとに、洋服を事前に試着して購入するように、旅を事前に少し体験してから購入するという購買体験の新しいプロセスを、デジタルを通じて創出したいと考えています。JALオンライントリップでは、まず事前に参加者のご自宅に目的地の特産品をお送りします。開催当日は、「JALデジタルフライト」で目的地までオンラインでの移動をお楽しみいただいた上で、現地からの中継で旅を体験できるという構成になっています。

主担当は、デジタルイノベーション推進部で、企画、シナリオ作り、当日の中継などを行います。当日の出演者として、運航乗務員や、客室乗務員、さらには地方自治体の方々が携わっています。特に、客室乗務員に関しては、4カ月ほど前から「ふるさと応援隊」という社内のプロジェクトが発足し、出身地やゆかりのある土地に対して貢献したいと手をあげた約1,000人のメンバーがいます。そのふるさと応援隊の中から、渡航先にゆかりのある乗務員が案内役をしています。主担当はデジタルイノベーション推進部ですが、出演や自治体の巻き込みも含めて全社単位で行っているプロジェクトです。

昨年中は、7月から計4回のオンライントリップを開催しました。場所は、島根県沖ノ島海士町(7月)、青森県八戸市(9月)、北海道釧路市(11月)、鹿児島県鹿児島市(12月)となります。2021年からは、2月末に沖縄県北部地区で行い、そこからは鹿児島県奄美群島(3月)、石川県加賀市(4月)と月一回程度のペースで開催予定です。JALグループ便の就航地を基本に、全国津々浦々、方面を絞らずに行っています。また、現地からの中継を行いますので、自治体からの協力を得られることも不可欠となっています。

デジタルイノベーション推進部 下川氏

Q. JALオンライントリップならではの特徴は?
毎回、どんなコンセプトでその土地の魅力をお伝えするか、JALと渡航先の自治体の両者で議論を重ねます。90 分のツアーですが、いわゆるガイドブックで出てくるようなゴールデンルートを案内するようなツアーではなく、ちょっとニッチな、ある意味人との交流や現地のアットホームさを重視してコンテンツ作りをしています。

例えば、八戸であれば、南部せんべいがあります。昨年企画に携わってくださった方が、八戸せんべい汁協会の所長さんで、青森といえば一般的に海鮮にフォーカスすることも多いですが、せんべい汁に限らず「南部せんべい文化」を広めたいという思いに共感し、ここに着目しました。現地の方は南部せんべいをお皿代わりに使用するそうです。おつまみを乗せたり、お酒の受け皿にしたりすると、おつまみやお酒のうまみが南部せんべいに染みてフニャフニャになるので、それをまた食べるんです。後は、手が汚れないようにおにぎりを挟んで食べるといった使い方もあるそうです。こういった奥深い現地の食文化を伝えるために、南部せんべい、日本酒と、南部せんべいに載せるサバの缶詰を入れましょうといったメニューになりました。さらに、そのメニューを楽しんで伝えるためには、どういう場所でどんな人にどのように伝えてもらったら良いかを考え、徐々にコンテンツを決めていくような流れです。一から自治体の方と一緒にツアー構成を作っています。

一般的な観光名所に関しては、動画サイトやウェブ上で綺麗な写真などのコンテンツが溢れていますので、お金を払ってでも知りたいと思うようなちょっとマニアックな魅力にフォーカスしています。

Q. 企画・制作において苦労した点は?
セレンディピティ(偶然の発見)をコンセプトにしているので、作り込みすぎず、自然体で、その日の偶発的な事象もある意味ポジティブに捉えるようにしています。例えば、当日現地が土砂降りであったり、海が一番綺麗な季節でなかったりしても、そのままを映します。

コンテンツの中で、デジタルフライトと現地観光の両方が生中継となります。デジタルフライトは離発着の映像は事前に撮影したものを利用しますが、運航乗務員と客室乗務員が出演する部分は全て生中継ですので、テクニカルなトラブルもつきものです。それをファシリテートしながら、代替案も持った上で、映像が乱れたときにどう回収するのかといったポイントが重要です。ある意味テレビのニュースに近いような感じです。ニュースキャスターがいて、中継があって、上手くいかなければニュースキャスターが引き取ってというようなイメージです。

我々の場合は、ふるさと応援隊の客室乗務員が、添乗員役かつファシリテーターとして入りますので、うまく中継がつながらないイレギュラーな状況も乗務員としての経験を活かして、彼らに救ってもらっています。毎回生中継なので、冷や冷やしながら実施しています。もちろん、本番に向けて練習は欠かせませんが、本番では何かが起こるものと考え、あらゆる代替案を事前に想定します。

ふるさと応援隊の客室乗務員が旅の添乗員役として出演

Q. オンラインでの開催において工夫した点は?
チャット機能を使って、お客さまのご質問を随時受け付けています。テレビ番組の副音声のような盛り上がりを、チャット機能を使って作っています。また、デジタルフライトの離発着の映像については、コックピットからの映像を録画してお見せしますので、普通のフライトで見えない映像を非現実的になりすぎない範囲で取り入れることで面白いものにできればと考えています。

そのほか、ブレイクアウト ルームを使って、プログラムの最後の約15分は小ルームに分かれたコミュニケーションタイムを設けています。オンライントリップのお客さまは、一回につき大体30名程度なので、3~5チームに分け、各チームに必ず、現地の方と運航乗務員、客室業務員が一名入ってお話をするようにしています。オンライン型の旅行は、PCの前で見ているだけの受動的な体験になりやすいので、必ず参加者全員が一お話いただけるような仕組みを作っています。

Zoomの機能としては、スピーカーに着目していただくために、スポットライト機能をよく使用します。また、参加型のため、基本的にはお客さまが自由に会話できるようにしていますが、コンテンツの流れによっては、ミュートのし忘れが発生する場合もあるので、運営側でミュートにするなど、工夫しながらスムーズに運用できるようになりました。

デジタルフライトの様子

Q. オンラインの開催でのトラブルは何かありましたか?それをどのように乗り越えましたか?
お客さまはビジネスパーソンだけではないので、これを機に初めてZoomを使う方もいらっしゃいます。そこで、冒頭にZoomのレクチャータイムを作っています。

また、スタートした当時は、当日のZoom配信に関わる事務方メンバーの人数も多く、トラブルも多発して、中々上手に運営体制を構築することができませんでした。実施回数を重ね、今ではかなり安定して配信することができています。

Q. お客さまからの反応は?
オンライン旅行への期待感は、まだまだ良くも悪くも低い状況です。体験前は「正直そこまで期待していなかった」「JALの乗務員とお話しできるかな」というように、あまり高い期待を持たずに参加したというお声が多いのですが、参加後は「思った以上に参加型のツアーで良かった」「現地の人ともお話できて楽しかった」という嬉しいお声をいただいています。

特産物を最初にお送りし、一緒に食べたり飲んだりしながらご参加いただくので、「五感を刺激された旅行体験で、期待以上に楽しかった」、「現地のことをこんなに深く知れるとは思わなかった。現地に行きたくなった」といったお声も多くいただいています。

「オンライントリップってお金を出してまで、参加する必要があるかな?」というイメージがあるので、その意義を知っていただくというところのハードルは高いですが、そこを超えていただければ、参加者の皆さまには非常にご満足いただけるコンテンツになっています。

また、ビジネスパーソンは、PCやスマホを使った遠隔での会議に慣れていらっしゃる方も多く、参加のハードルが少なくとも7月から考えてもだいぶ下がってきているように感じます。しかし、年配の方やお子さまを含めたご家族で参加という方も多くいらっしゃるので、「Zoomってそんなに難しくないよ」と知っていただくための工夫が必要です。ご年配の方も、一回参加してみればすぐに慣れる方が多く、リピーターも増えています。これまで、200名以上の方々にご参加いただきました。

Q. 今後の予定は?
今後はより多くの方にご参加いただけるよう、さらに頻繁に開催したいとは考えています。今は会議形式でツアーを行っていますが、今後はウェビナー形式でも楽しめるような形も考えたいです。まだまだこれからなので企画段階ではありますが、例えば日本酒の蔵元から、日本酒が一年かけてどのように作られているのかだとか、オーナーおすすめの食べ物とのマリアージュだとか、そういったテーマをグッと絞ったウェビナーコンテンツを、実際に日本酒をお届けしながら開催するというアイデアもあります。こういったものでしたら、Zoom Meetingsではなく、ウェビナー形式でも楽しんでいただける可能性もあります。また、Zoomで行った90分のコンテンツを、今後アーカイブとして2~3分程度の動画に編集し、まとめてご覧いただける、というようなことも考えています。

映像を見るだけではなく、特産品を知っていただくということも一つ特徴なので、2月の沖縄編からは「JALショッピング」というJALグループの公式通販サイトで商品を販売しており、オンライントリップに関連した商品を、事後的にも購入して楽しんでいただくようなサイト作りも計画しています。オンライントリップはサイトのキラーコンテンツとして位置づけながら、地域の物販収入へも長く貢献できるような、「お客さま-自治体-JALの三方よし」のカタチを目指しています。

また、昨年開催した第三弾のツアー(北海道釧路市)では、アイヌ文化についご紹介しました。現地のアイヌコタンというエリアからアイヌ民族の方に出演していただき、「アイヌ民族楽器」を特産品セットの中に入れて実施しましたが、好評でした。飲食も良いのですが、そういった文化体験をウェビナーで行っても楽しいかと思います。

関連リンク
JALオンライントリップ
https://www.shop.jal.co.jp/s/onlinetrip/

その他関連リンク
事例ビデオ:日本航空株式会社
https://explore.zoom.us/jp-jp/customer/all.html

ブログ:ニューノーマル時代に、「企業」と「個人」はどう変わるべきか? (日本航空株式会社 執行役員IT企画本部長 岡敏樹様、Zoom Video Communications日本法人代表 佐賀文宣)

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