リーダーが AI を活用して従業員のデジタル体験を向上できる 7 つの方法

優れた企業は、競争の激しい市場で差別化を図るため、顧客に並外れた体験を提供することに全神経を集中しています。 しかし、そのような体験を社外に届けるためには、まず社内に目を向ける必要があります。 組織に優秀な人材を惹き付けて定着させるためには、自社の力強い文化を旗印に掲げられる必要があります。そして従業員の満足度、エンゲージメント、生産性を維持するためには、従業員のデジタル体験が不可欠になっています。
多くの組織が、従業員に役立ててもらい働きやすくなるように、AI ツールを作成しています。Zoom も例外ではありません。 たとえばこの前、私はミーティングに出席できなかったのですが、新しい AI 機能のおかげで自分がやるべきことを把握できました。 Zoom のミーティングの概要機能が、トピックのまとめと数分でできるアクション アイテムを送信してくれたので、時間を節約できたうえ、同時にチームが次のステップに進めるように支援できました。
一方で、AI が作業を自動化すると自分のロールが必要なくなるのではないか…と不安になる従業員がいるのも無理はありません。 このような緊張感の中で、いかに効果的に AI を職場に取り入れるかというテーマは、最近多くの雇用者の頭を悩ませています。
私は直近の働き方改革サミットで、Zoom のお客様企業である Asurion で最高情報責任者を務める Casey Santos 氏、Kaiser Permanente で遠隔医療および在宅ケア技術担当副社長を務める David Strickland 氏、Mercer でシニア パートナー兼デジタル人事戦略グローバル リーダーを務める Jason Averbook 氏に、AI を活用して従業員のデジタル体験を改善する方法についてお話を伺いました。 主な要点には、次のようなものがあります。
1. 人間に取って代わるのではなく、人間味が必要な仕事を強化するのが AI
「私たちは、コンタクト センターの従業員がよりパーソナルな接客ができるように、AI を活用して従業員がより早く回答にたどり着けるように支援しています。」
Asurion 最高情報責任者、Casey Santos 氏
Santos 氏によると、同氏が所属する組織では AI のおかげで従業員が顧客のニーズに素早く対応できるようになり、ウィンウィンの関係を築いているそうです。 また、組織内ではチャットボットを使用して、IT に関する日常的な質問やアクションにはセルフサービス モデルで従業員を支援しています。
しかし、チャットボットはヘルプデスクの仕事に取って代わるものではありません。実際、チャットボットのおかげで、スタッフは人間味が必要なやり取りに充てる時間を増やすことができています。これは従業員の経験や文化にとって良い影響です。 「つまり、チャットボットがあると、より簡単かつ効果的に人々にアプローチできるようになるのです」と Santos 氏は説明します。
2. 従業員のデジタル体験を深める鍵はパーソナライゼーション
「従業員や顧客に『私はあなたが誰なのか、そしてあなたが何を大切にしているのか知っています』と伝えることができれば、いつでも関係を深めることができます。」
Kaiser Permanente 遠隔医療および在宅ケア技術担当副社長、David Strickland 氏
学習やトレーニング用のコンテンツ作成にチームが費やしている時間は、ジェネレーティブ AI を使用すればわずか数分に短縮できます。 コンテンツは、従業員の特定のロール、目標、キャリアパスに合わせて調整できるため、より効果的になります。
「AI のおかげで、各人の人となり、組織で今何をしているのか、今まで何をしてきたのか、今後目指すところなどに基づいて、これまでになくコンテンツをパーソナライズできるようになりました」と Averbook 氏は述べます。 同氏は、組織が従来のイントラネットや従業員ポータルを、真にインタラクティブな従業員のデジタル体験へとレベルアップさせるために、ジェネレーティブ AI を優先していると言及しました。 従業員の働き方や交流方法に関するデータと学習を活用することで、雇用主は従業員のことを「知る」デジタルツールを作成し、最も効率的かつ効果的な働き方を支援するための提案ができるようになります。
3. AI は、従業員がどこにいても従業員の理解できる言語で対応可能
「このテクノロジーは、人事や IT に詳しくない従業員、マネージャー、リーダーにとっても機能しなければなりません。 人間の言葉を話す必要があるのです。」
Mercer シニア パートナー兼デジタル人事戦略グローバル リーダー、Jason Averbook 氏
これまでの古い技術では、従業員は必要な情報を得るためにどのようなキーワードを使用すべきか知っておかなければならず、そのフレーズが直感的とは言えないことが多々ありました。 かつて「扶養家族を増やす」「育児休暇」といったようなキーワードで検索したことが、皆さんもあるのではないでしょうか。
ジェネレーティブ AI は、テクノロジーを活用して会話する人々の能力を、これまでにないやり方で開花させました。 Averbook 氏は、大規模な言語モデルは専門的な人事や IT 用語ではなく、従業員がどのように話すかを理解できると指摘します。 今や人々は「もうすぐ赤ちゃんが生まれる」と言えば、給付金の詳細や情報の更新に関する案内を入手できます。 このようなやり取りが、信頼関係の構築や、技術の普及に役立っています。
4. 変化は難しい – だからこそチェンジフルネス(変化を受け入れるマインドセット)の実践あるのみ
「5 世代もの人が一緒に働いています。 デジタル移民もいれば、デジタル ネイティブもいます。 このようなツールやスキルが自然と身に付いて、継続的にイノベーション、学習、試行錯誤できる人もいますが、変化への対応が難しい人もいます。」
Mercer シニア パートナー兼デジタル人事戦略グローバル リーダー、Jason Averbook 氏
AI は、これまでにないスピードで進化しています。 このテクノロジーがもたらす恩恵にあずかろうとするならば、Averbook 氏の言う「チェンジフルネス」、つまり変化を受け入れるマインドセットが必要です。
これは、新しいことに挑戦し、イノベーションを起こし、そして早々と失敗することを意味します。そんな恐ろしいことを…と思う企業もいるでしょう。 AI の機能が飛躍的に向上する中、試験的な試みを実施し、試行錯誤することを奨励している企業は、進化に追いつくことができる立場にあります。一方、ChatGPT などのテクノロジーの使用を禁止または制限して従来のアプローチを採用している企業は、遅れを取ることになります。
5. 焦点を当てるべきポイントとは? まずはインパクトから開始
「私たちが皆さんのお役に立てる一番の近道は、弊社が解決しようとしている問題や追求できる機会に焦点を当てることです。」
Kaiser Permanente 遠隔医療および在宅ケア技術担当副社長、David Strickland 氏
試行錯誤する姿勢を受け入れるということは、自由奔放なアプローチで組織をリスクにさらすという意味ではありません。 しかし、何から手をつければいいのかわからないこともあります。 Averbook 氏は企業に、「どのように働きたいかをベースに考えたときに、組織としてこうしたツールをどのように使っていくべきか」と自問し、従業員とビジネスにとって最もインパクトのあることに力を注ぐよう推奨しました。
6. 最低限実現可能な製品ではなく、最低限愛される製品を考えよう
「第 1 段階は成功させなければなりません。 視聴者はこれまでにない期待を寄せているわけですから、最低限実現可能な製品ではなく、最低限愛される製品でなければならないのです。」
Mercer シニア パートナー兼デジタル人事戦略グローバル リーダー、Jason Averbook 氏
しかし、新しい技術の導入に焦りすぎると、落とし穴にはまりかねません。 まだ解決できていない不具合がある未完成の製品とはいえ、それで従業員が一度でも嫌な思いをすれば、たとえテクノロジーが向上しても、従業員は今後その製品を使う気にならないかもしれません。 Averbook 氏は、最低限実現可能な製品では従業員の大きな期待に応えられない可能性があるため、雇用主は「最低限愛される製品」を目指すべきだと推奨しました。
7. AI の活用で「心の仕事」に時間を割く
「私たちは、日常業務から離れ、より創造的でユニークな作業、つまりビジネスとして、パートナーとして、人間として、私たちを分かつものに集中できるようになるでしょう。」
Asurion 最高情報責任者、Casey Santos 氏
Averbook 氏曰く、仕事には「手の仕事」「頭の仕事」「心の仕事」の 3 種類があるそうです。 同氏は、「手の仕事」を構成するリサーチやトランザクション系の業務(たとえば、学習コースや新しい人事方針、職務内容などのコンテンツを作成するような時間のかかる作業)は、AI が取って代わると予想しました。
そうなると、いかにビジネスを成長させるかなどの「頭の仕事」と、行動や決断に共感を呼び込むなどの「心の仕事」に集中する時間を多く確保できるようになります。
「つまり、組織のために重要な仕事を追求する機会を、誰もが手に入れるのです」と Strickland 氏は付け加えました。
仕事の進め方を変えるとき
働き方改革サミットでお客様と交わしたこのような会話から、仕事の進め方が確実に変化していることが分かりました。 Averbook 氏が予想したように、ジェネレーティブ AI は真の働き方改革(あるテクノロジーから別のテクノロジーへの単なる移行ではなく、仕事の在り方や仕事の意味の進化)をもたらすでしょう。
リーダーは、新しいテクノロジーや従業員のデジタル体験が人々にどのような影響を与えるのか常に把握しながら、心して AI を導入することが求められています。 何から手をつければいいのか考えると頭がパンクしそうですし、そもそも 1 回でうまくいくとは限りません。 しかし、重要なのは挑戦することです。 変化を迎え入れることです。なぜなら、変化は確実に訪れるからです。
働き方改革サミットのオンデマンド ライブラリで、会話の全容をご視聴いただけます。