働き方改革サミット – 日本 後編

働き方改革サミット – 日本 後編

4 月 20 日に、第一回目となる「働き方改革サミット – 日本 2022」のジャパンセッションが開催されました。

前編でご紹介した「Zoom のビジョン」「ワーク・トランスフォーメーションを進めている 3 つの柱に続いて、後編では特別ゲストを招いたパネルディスカッションにて、他の組織が未来の仕事のあり方をどのように模索しているのかを伺いました。オンデマンドビデオはこちら

パネルディスカッション特別ゲスト

NEC 執行役員常務 兼 CIO 兼 CISO 小玉 弘氏
ITR 会長 エクゼクティブアナリスト 内山 悟志氏
ZVC JAPAN株式会社(Zoom)社長 佐賀文宣

効率の高い仕事環境を実現のためにしていることは?

佐賀:この 2 年の間、働き方の変化を感じられたと思います。感染状況に対応し経済活動を回しながら、企業文化を維持するため、思い切った職場改革を実施する企業も多く見られました。特に NEC 様では経営課題の一つとして従業員のエンゲージメントの強化を掲げていらっしゃいましたが、どのように従業員同士が協業を進め効率の高い仕事環境を実現しているのでしょうか?

小玉氏:実は、弊社で 2018 年に行ったサーベイでは「スマートな働き方の実践度」が 22% と、とても低い状況でした。その改善をと、エンプロイーエクスペリエンス/エンゲージメントの向上を目指した働き方改革を「Smart Work」として、意識改革・業務プロセスのシンプル化・インフラの整備を推進してきました。このインフラの整備の中では、時間と場所の解放・多様な働き方・セキュリティファーストという考えのもと、社員自らデザインしてイメージをもとに、またグローバルで繋がる力、巻き込む力を強くしようとこれまでばらばらだったドメインを NEC.com に統一。特に Zoom を中核にデジタルツール・データ連携・セキュリティなどを一新して、デジタルワークプレイスとして展開。テレワークデイズというイベントを実施し、4 万人がトライアルを実施して検証をしてきました。

そのこともあり、初めての緊急事態宣言の時もスムーズにリモートワークに移行できました。当時のテレワーク実施率も 85% に、また「スマートな働き方の実践度」も 64% と向上。本当に Zoom のおかげだと思っています。

その一方、コロナ化でリモートワークが急速に普及する中で、課題も見えてきました。インターネットや新規クライアントの設備の増強やセキュアーなパソコンの配布などの環境面、データ保護・セキュリティ対策の強化などの安全面、お客様との契約のリバイスや制度の変更、押印レスなどビジネスプロセスの変更や、健康管理や繋がり感・コミュニケーションなど心や体の観点の課題など、これらをテクノロジーやサービスを駆使して、従業員の声を聞きながら仕組みとセットにして、トライアンドエラーを重ねながら進化させてきました。

内山氏:働き方改革は、コロナ以前からも取り組まれてきましたが、コロナによって、テレワーク・在宅ワークなど働き方の「場所」という意味で、多様性ができ加速したのだと思います。ある意味、いずれ来るであろう将来の働き方、いわゆるデジタル前提にした仕事のあり方や世界観を多くの方々が疑似体験したのではないかと思います。実際にやってみて、「オンラインでもこんなことができるね」「バーチャルでも便利だね」ということがわかる一方、「ここはリアルがいいね」など、たくさん経験されたのではないでしょうか。デジタルの世界ではこういった実体験が非常に重要です。それをみんなが得たということは非常に大きいのではないかと思います。

多くの企業は、テレワーク在宅勤務という働く場所の問題だけでなく、どのようにコミュニケーションをとるか、コラボレーションするか、会社と個人の関係はどうあるべきか、仕事はどう進めるべきかなどを含めて、幅広く次世代の働き方を考える機会になったのではないか、これからますます進展していくのではなきかと思います。

Zoom の活用事例

佐賀:この新しい働き方は、この 2 年間で加速し実体験ができたけれども、みなさんその前から実践されていたのですね。

2 つ目の質問ですが、私どもは日本中の皆さんが Zoom を使ったクリエイティブな取り組みをしているのを目の当たりにして、多くのことを学ばせていただいております。お客様とお話ししていて、こんな業務にも Zoom をお使いいただけるのかと発見がありワクワクするのですが、DX の最前線をいくリーダーとしてそんな事例をご紹介いただけないでしょうか。

小玉氏:今や日々の業務で Zoom 活用が当たり前になり、ウェブ会議やウェビナー、ワークショップ、ビジネスでのコラボレーションツールの連携など、標準ツールとして浸透してきました。ツームの会議は平均 1 日 1.5 万回、ウェビナーの配信スタジオを 20 ヶ所設置して、お客様や海外の方とも距離を感じず素早くコミュニケーションができて助かっています。

パーパスや想いや方針を浸透するのも非常に大事で、大人数のタウンホールミーティングも実施しています。例えば社長自ら、毎月 Zoom のウェビナーを活用して、想いや考え、質問など双方向でのコミュニケーションを行なっており、私自身も、複数拠点、グローバルにまたがる数千人の部門のメンバーへ、ビジョンやゴールの浸透、コーポレート変革のために、場所と言葉の壁を超えて(私たちにとって一番助かっている Zoom の翻訳機能を使って)積極的に意見交換ができるようになりました。

新しいアイデアや想像力を高めるためのブレイクアウトセッションによるチームビルディングや、工場などの現場でのリモートでのサポートでも非常に活躍しています。

また一方でフェイス to フェイスも非常に重要なこともありますので、目的に応じて使い分けをするよう心がけています。

内山氏:適応分野が非常に広がっていて、私も Zoom の恩恵に預かっています。3 つ適応が広がっているポイントがあります。

まず 1 点目はオフィスワークだけでなく、工場や屋外など現場業務にも浸透しているということ。これまで、コミュニケーションやITがなかなか行き届かなかったところにも、コラボレーションの輪が広がってきています。

1 点目は、社内だけのコミュニケーションだけでなく、取引先やお客様、オンライン商談なども進みビジネスの最前線で使われることも多く出てきている点。

最後に、会議や連絡相談といった会話だけでなく、ワークショプのような、これまでは物理的に集まっていたような作業での活用。例えば私自身もイノベーターを育成するデジタルイノベーションワークショップ「内山塾エックス」を 10 年以上行なっているのですが、これまでリアルな場で集まってチームで討論し、付箋や模造紙を使っていたものの、2 年半前からオンラインになり Zoom を活用しています。全く同じように知恵を出し合って討議したり、ブレイクアウトルームに分かれて議論したり、成果物を生み出すことできていますので、そういったクリエイティブな分野でもさらに活用されていることが注目すべき活用ポイントになっていると思います。

テクノロジーへの投資。その正当性をどう説明する?

佐賀:続いて 3 つ目の質問です。テクノロジーによって、生活も快適になりましたし、ビジネスの生産性も向上してきたことに議論の余地はないかと思いますが、一方でのビジネスの成長の同時に安定性も両立させる必要があります。このバランスは非常に難しい課題だと思います。このテクノロジーへの投資への正当性について、説明をしていらっしゃるのか教えていただけますか?

小玉氏:効率化や投資対効果の評価は、課題として認識している点であり、社内の活用だけではなく、ビジネスポテンシャルやその展開を含めた視点でどうかという判断をしています。特に環境の変化が激しく、また正解がなく、個別の案件では判断が難しくなっています。この領域では end to end を意識しながら、スモールスタートでアジャイルに取り組んでクイックwinを積み上げていくことで、イノベーション投資対効果の最大化、また何より人の力を引き出すというこの価値には無限の可能性があると考えています。

企業にとっての本当の価値は、私自身は人と文化とそのためのメカニズムが非常に重要だと思っています。コミットとして、中期計画では、エンゲージメントスコア 50%(2018 年の 2 倍の数字)を目標に掲げて、そのど真ん中の働き方改革を全社一丸で変革するという形で進めています。その上で、NEC技術とパートナー様の協業、どう組めばもっとより良いものができるかということを、我々自身が良いも悪いもテストベット、モデルケース、リファレンスとなり、お客様に価値を提供していきたいと考えています。

内山氏:IT アナリストを 30 年以上行なっている中で、多くの企業で IT の投資評価や事前進化の枠組みを作るお手伝いをしてきました。これまでは“費用対効果を中心に何千万の以上の投資なら役員会にかける”など枠組みで実施してきたわけですが、デジタルの世界の投資というのは、これまでの ROI だけでは測りきれないものがたくさんありまして、途中でやめたり、規模を急拡大したり、軌道修正をするなど、もう一つの違った考え方を取り入れないといけないと考えています。デジタル、オンラインへの投資についてどう捉えるかについて 2 点のアドバイスがございます。

1 点目は経費やコストという感覚から、将来への投資という考え方に変えるということ。

やはり DX などの取り組みは何度も挑戦し、場合によっては失敗することがあります。その学びから何度も軌道修正しながら進んでいき、未来の働き方・業務のあり方・未来のビジネスを作っていくものですので、ある意味事業の投資の一つと捉えていただく必要があるのかなと思います。

2 点目には、KPI とはよく言われますが、評価指標も変わってきています。従来であれば、お金に換算した費用対効果を中心に考えてきたわけですが、デジタルに対する投資というのは、将来に対する付加価値、従業員に対するエンゲージメントなどに大きく関わってきます。ですので、KPI を大きく見ていく必要があります。

経営者の方々には、「これから新しい働き方やデジタルに対応した業務についていけていけない企業には、優秀な人材は集まりません。魅力のある会社・働き方を提供できる会社こそ、これから成長ができていく企業なんです」と、そこに対する投資だと捉えてくださいと、重要性をお伝えしています。

今後の働き方は、元に戻るのか、それとも…

佐賀:小さく、でも早く投資をして失敗と成功を繰り返すというのがお二人に共通している点だと感じました。

最後の質問は、今後の働き方についてどのようにお考えですかという点です。いずれは元の状態に戻るとお思いでしょうか。それとも、従業員と社外のみなさまと仕事をしていく上で、新たな働き方を取り入れたり、新しい仕事環境を変えていったりなどご予定などおありでしょうか?

小玉氏:これから元に戻ることはなく、進化していくと考えています。ハイブリッドワークがより進み、そのために取り組んで行きます。これまで働き方改革というのは、「働きやすさ」でしたが、「働き甲斐」に軸足を移して、「Smart Work」から、「Smart Work2.0」へと進化して行きます。

単なるツールの話ではなく、オフィスの進化を伴う「Workplace」、勤務の形態や働き方の精度を含めて変えていく「Work Principles」、デジタルの力を最大化する「Digital Technology」の 3 つが一体となって進めて行く必要があると考えています。その中で、強いオーナーシップで自律的に自らが選択する「ロケーションフリー」、心理的な安全が確保されてチームのエネルギーが集結される「コミュニケーションハブ」、外向きの視点で会社組織のイノベーションを紡ぎ出す「イノベーションハブ」など、この働き方にテクノロジーを駆使して安心安全とウェルビーイングのデザインを組み込んでパフォーマンスの最大化を目指して行きたいというのが我々の骨子です。

とは言っても、リアルなオフィスも集う場として非常に大事で、ここにも進化が必要です。社員が日常的に体験できるように技術を各所に散りばめた設備やカフェテリアなどのリニューアルを行い、コミュニケーションハブとしてオフィスに来たくなる、来ると面白いということを実現したいですし、弊社の技術を使った「I:Delight Lab」や「Future Creation Hub」などをはじめとして、お客様やパートナーさんとの共創の場所として拡張を進めています。

「Digital Technology」では、Zoom を中核に Zoom 連携に強いツールを活用したハイブリッドワークの進化を目指して行きたいと考えています。例えば、どこで働いていても、リアルな空間と同じようにワンチームで繋がるものや、等身大サイズの映像でダイナミックにオフィスをつなぐ、空間を超えたアイデアの共有、クリアな音声と映像でリアリティのある議論を可能にするというものに挑戦して行きます。ここに NEC の技術を連携した新たな価値、パスワードレスや AI を活用したイキイキと働ける環境、現場を含む社内外のコラボレーションのツール、社員が安心して働ける品質が高い安定した環境など、柔軟性、アジリティとレジリエンスを両立して Zoom と強く連携して実現して行きたいと考えています。

内山氏:経済活動は戻ると思いますが、働き方はかつてのように戻ることはないでしょう。これからはどんどんハイブリッドになるはずです。

コロナのようなパンデミックにかかわらず、災害、昨今の紛争や、原材料の高騰など、予期せぬ外部環境の変化というのはこれからも起こりうるというのは前提に考えて、企業は備えておかないといけないと思います。

キーワードは 2 つ。働き方だけでなく業務プロセスや組織運営、ビジネスそのものも「サステナビリティ(持続可能性)」と「レジリエンス(回復力)」を持つことが非常に大事です。何か環境変化が起こった時に、それを乗り越えながら進む持続可能性があらゆる面で必要ですし、仮に大きなインパクトを受けたとしても立ち直り回復して進んでいける力を持っていることが重要です。これからデジタル、オンライン、バーチャルとリアルな経済活動をいかに融合しながら新しい世界観を我々がどう作り出していくかが重要だと思います。

佐賀:貴重なお話をありがとうございます。Zoom が皆さんのお役に立てていることが非常に嬉しく思いますし、それぞれの企業では従業員が働きやすい環境を作り出し同時に業務の効率性を進める中で、私どもの想定している以上に仕事のやり方そのものが進化していると実感しました。

小玉様は、「働きやすさ」から「働き甲斐」の向上に軸足を移しているということを話していらっしゃいましたが、職場の DX が業務の効率化ということから、従業員の意欲や満足感を高めるという段階に入ってきたということを感じています。

Zoom は「Delivering Happiness」を掲げていますが、まさに、目指していることが実現されてきていると感じました。一方で Zoom にも様々なご注文をいただきました。私共も現状に甘んじることなく、さらに機能面でも進化をしていかなければと思いました。

DX のプロフェッショナルの方から、一般のユーザーの方まで、あらゆる人が一段と使いやすくなる、働き方の改革に貢献していくという決意を新たにいたしました。

最後に、ハイブリッドな職場がビジネスに与える影響

ZVC JAPAN社長 佐賀文宣

働き方のトランスフォーメーションは、私たちの生活のあらゆる側面において、すべての人に影響を与えることは確実です。 Zoom は、みなさんの組織にとっての働き方の新定義をみなさんが受け入れ対応する間、その移行を支援することを僭越ながらお約束します。

しかし、すべては「ART OF THE POSSIBLE(可能なことを追求する精神)」に立ち返り、こうした 変化が組織の文化にもたらす無限の可能性を、そして、みなさんの組織でそれぞれに合った仕事の場所とやり方を選択した従業員の方々の無限の可能性を生かすことに尽きるのです。

Zoom 全社員に代わりまして、2022 年以降のみなさんのご成功をお祈りしています。 これからみなさんがどのようなご活躍をされるのか、楽しみでなりません!

働き方改革サミットのオンデマンドビデオはこちらからご視聴いただけます。

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